VfB Stuttgart

VfB Stuttgart
――遠藤航&伊藤洋輝がここから飛躍
降格危機→ブンデス2位の快進撃――

■ 創設 | 1893年
■ ホームタウン | シュトゥットガルト
■ ホームスタジアム | MHPアレーナ
■ 代表 | アレクサンダー ヴェーレ
■ 主な獲得タイトル |
ドイツサッカー選手権優勝:2回
ブンデスリーガ優勝:3回
DFBポカール優勝:3回
DFLスーパーカップ優勝:1回
ドイツ1部のブンデスリーガで2021-22シーズンから2年連続で残留争いに巻き込まれていたチームは昨季、大躍進を果たした。一昨季の終盤に就任したヘーネス監督の下、ポゼッションスタイルに大きく舵を切ると、序盤戦から上位争いに加わることに。シーズンが進むにつれて成熟度が高まり、最終的には前年から“勝ち点40増”(33→73)の2位でフィニッシュした。2024-25シーズンは15年ぶりにUEFAチャンピオンズリーグの舞台に立つ。
MF-6
中盤の底から1本のパスで攻撃を加速させる、へーネス監督の勇敢なサッカーに不可欠な司令塔。8歳からバイエルンの下部組織で育ったMFは、そこで教えを受けた指揮官を追ってホッフェンハイム、そして昨夏にシュトゥットガルトへと渡り、移籍した遠藤航の穴を加入1年目で見事に埋めてみせた。ドイツ代表のユリアン ナーゲルスマン監督も今夏で引退した稀代のプレーメイカー、トニ クロースの後継者の一人として期待を寄せる有望株だ。
MF-27
この1年で一躍ドイツを代表するアタッカーの一人へと変貌を遂げた26歳。ドルトムントから移籍後2シーズンは様々なポジションで起用されてきたが、昨季は左ウイングに固定されて大活躍。高い技術と巧みな仕掛けを武器に敵を翻弄する技巧派のプレースタイルで抜群の存在感を示し、ブンデスリーガ全34試合に出場して8ゴール7アシストをマークした。昨年10月にはドイツ代表デビューを果たし、今夏のEURO2024にもメンバー入り。
DF-45
尚志高校(福島)時代には“怪物”とも称されたアフロヘアーがトレードマークの若きセンターバック。2022年の加入以降、セカンドチームでプレーを続けてきたが、厳しい環境の中で成長を遂げ、昨季は後半戦でトップチームのベンチ入りを経験した。セカンドチームではレギオナルリーガ南西部(4部)で26試合に出場して(2ゴール1アシスト)3部昇格に貢献し、対人の強さに加えてポジショニングやビルドアップも向上。今後が楽しみな逸材だ。
GK-1
GK-21
GK-33
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DF-3
DF-4
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DF-13
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MF-5
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「ヘーネス」の名を背負う42歳
攻撃的サッカーで評価急上昇中
監督
叔父にバイエルンの名誉会長を務めるウリ へーネス、実父に同クラブで5度のリーグ制覇を経験したディーター へーネスを持つサッカー家系に生まれ育った。2010年に現役を引退後、RBライプツィヒやバイエルンのユース年代の指導を経て、2019-20シーズンにバイエルンのセカンドチームを指揮。ポゼッション重視の攻撃的サッカーでドイツ3部リーグを制したことで一気に評価を高め、トップリーグの監督(ホッフェンハイム)へと上り詰めた。

シュトゥットガルトと言えば、やはり日本人選手に馴染みの深いクラブという印象を持つ方が多いのではないだろうか。2011年に岡崎慎司を獲得して以降、同年に酒井高徳(2011-15)が加入し、それから浅野拓磨(2016-18)、細貝萌(2016-17)、遠藤航(2019-23)がプレー。昨季は伊藤洋輝(2021-24)、原口元気(2023-24)がトップチームに在籍し、セカンドチーム以下ではチェイス・アンリ、岡田怜(2022-24)、花城琳斗が経験を積んできた。その中でも大きなインパクトを残したのは、現リバプールの遠藤だろう。2021年からキャプテンを務めた“中盤のエンジン”は、2季連続でリーグ最多のデュエル成功率を記録するなど大黒柱として活躍。2021-22シーズンはチームが昇降格プレーオフ圏内の16位に沈む中、最終節ケルン戦の後半アディショナルタイムに伊藤のアシストから劇的な決勝点を奪取し、逆転残留の立役者となった。

ブンデスリーガ創設時から1部リーグに参画している古豪だ。1893年に設立されたクラブは、1963年からスタートしたブンデスリーガで1983-84シーズン、1991-92シーズンにマイスターシャーレ(優勝皿)を手にした。その後は財政難の影響もありリーグ中位をさまよったものの、2000年代に入って若手の有望株を重宝する体制に転換すると風向きが変わることに。“鬼軍曹”フェリックス マガト時代を経て、迎えた2006-07シーズンにはアルミン フェー監督の下、前年9位からの大躍進で3度目の優勝を成し遂げる。しかし以降は再び苦しい時期が続き、2015-16シーズンには17位でクラブ史上2度目となる41年ぶりの降格を余儀なくされた。その後は1部と2部を行き来することになったが、昨季は15年ぶりに優勝争いを演じて古豪復活をアピール。新シーズンは帰ってきたUEFAチャンピオンズリーグでの戦いも楽しみだ。

“育成の名門”としても知られるシュトゥットガルトは2000年代以降、数多くのスタープレーヤーを生み出してきた。現在のドイツ代表でもアントニオ リュディガー(現レアル マドリー)やヨシュア キミッヒ(現バイエルン)、ティモ ヴェルナー(現トッテナム)らがシュトゥットガルトの下部組織出身だ。それ以外にもベルント レノ(現フルアム)、セルジュ ニャブリ(現バイエルン)といった名手を輩出している。特にリュディガーはユースからセカンドチーム、そしてトップチームと段階を踏みながら駆け上がり、ワールドクラスのDFへと飛躍していった。昨季は19歳のウインガー、ルカ ライムントがトップチームデビュー。同じくドイツ世代別代表のGKデニス ザイメンやDFチェイス アンリらもベンチ入りを経験した。ここからまた新たなスターが誕生する可能性を考えると、今回のジャパンツアーでも若手のチェックは必須だ。


勝つのはポゼッションかプレッシングか?
シュティラーか福岡か?
京都サンガF.C.にとってはクラブ創設30年の歴史上初となる海外クラブとの対戦。戦術的には対照的な両者の顔合わせだ。ヘーネス監督の下で後方から攻撃を組み立てるポゼッションスタイルを志向するシュトゥットガルトに対し、京都は気迫と闘争心を前面に出したプレッシングスタイルが特徴。ボールを繋ぎながら敵陣に攻め込んでいくチームと、ボール奪取からの素早い攻撃を繰り出していくチームの激突とあって、どちらが主導権を握るかは楽しみなポイントだ。注目したいのは攻守の柱を担う中盤の2人、シュトゥットガルトのアンジェロ シュティラーと京都の福岡慎平。前者がボールに触る機会を増やして持ち前のパスセンスでゲームをコントロールするのか、後者が積極的なボール奪取から前線に駆け上がってフィニッシュに絡むのか。彼らの出来が勝敗の鍵となりそうだ。

ドイツ人監督対決。
スキッベのハイプレスにヘーネスの突破口は?
シュトゥットガルトが京都戦から4日後の2試合目で相対するのは、かつてドルトムントやレヴァークーゼンなどで指揮を執った58歳のドイツ人監督、就任3年目のミヒャエル スキッベ率いるサンフレッチェ広島だ。2016年から2季シュトゥットガルトでプレーした浅野拓磨(現マジョルカ)の古巣でもある。Jクラブでは異質の強烈なハイプレッシングと高速カウンターを武器に、2年連続リーグ3位という好成績を収めた広島。その守備網をブンデスリーガの強豪はいかにして攻略するのか、どのような配置や移動を駆使して敵陣に侵入していくのかは見ものである。また、個の仕掛けで局面を変えられる両プレーヤーにも注目したい。シュトゥットガルトのクリス フューリッヒと広島の満田誠は、ゴール前で違いを作れる選手。チームを勝利に導くパフォーマンスを披露するのはどっちだ?


Text by Ryohei Hayashi
Edited by footballista
Photos by Getty Images