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阿部サダヲ、「しあわせな結婚」で見せた“圧倒的にうまい芝居”…稀有な存在感を武器に躍動する実力派俳優

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※ザテレビジョン撮影

阿部サダヲ

9月からLeminoでも配信が始まったドラマ「しあわせな結婚」(2025年、テレビ朝日系)で、妻の秘密に揺れる弁護士を演じた阿部サダヲ。コミカルな場面で笑わせながら、夫婦の愛を問われる人物の心情を繊細に表現した。そんな阿部が出演した野田秀樹の作・演出による舞台「華氏マイナス320°」が、10月10日(土)にWOWOWライブで放送される。イギリス・ロンドンでも上演され、現地でも好評を博した作品だ。舞台、映画、ドラマと活躍を続ける阿部の軌跡を、代表作と共にたどる。(以下、ネタバレを含みます)

舞台から始まった俳優としての歩み

ハイテンションなコミカルキャラクターが強く印象に残るが、シリアスな役もこなす阿部。その堂々とした演技の一方で、カメラが回っていないところでは人見知りしたり、共演者との会話が少なかったりというエピソードもファンの間では有名で、メディアのインタビューなどでも、シャイな性格だと公言している。

それでいて、パンクコントバンド「グループ魂」ではボーカルとしてシャウトをキメる。こうした多彩な顔も、阿部ならではの稀有な存在感につながっている。

そんな阿部の俳優デビューは舞台だ。高校卒業後、家電量販店に勤め、いくつかの職を経験してから、1992年に松尾スズキが主宰する劇団「大人計画」に参加。グループ魂には、阿部の他、大人計画に所属する宮藤官九郎、皆川猿時、三宅弘城らも参加している。

同年、「冬の皮」で初舞台を踏み、日本テレビ系の「演歌なアイツは夜ごと不条理な夢を見る」でテレビドラマデビューを果たした。大人計画のオーディションには演技経験なしで挑んだというが、その後の活躍を思えば、天性の才能が備わっていたのだろう。

※ザテレビジョン撮影

阿部サダヲ

「華氏マイナス320°」で物語を導く“タスケテ”役

テレビや映画の方が目にする機会は多いかもしれないが、阿部は原点である舞台にもコンスタントに出演を続けている。所属する大人計画の公演に加え、劇団☆新感線の作品など、外部の作品でも活躍してきた。

舞台の最新作となる「華氏マイナス320°」を演出した野田とは、1998年の「ローリング・ストーン」から5度目のタッグ。長年の信頼関係もあるだろう阿部が託されたのは、「タスケテ」と呼ばれるキャラクターだ。

タスケテ以外に、メフィスト(広瀬すず)、窮理教授(深津絵里)、ハーメルンの笛吹き男(大倉孝二)、ウーロン・チャー会長(高田聖子)、裏ヶ有助手(川上友里)、ウーロン・デスマスク社長(橋本さとし)、表無助手(野田)、ファウスト(橋爪功)が主要キャラクター。出演者の中には、時代ごとに異なるキャラクターを演じ分ける者もいる。

本作のジャンルは、野田が設立した演劇カンパニー、NODA・MAPの公式サイトによれば「正しくない科学に基づいた、正しくないSF(サイエンス・フェイクション)」。サイエンス・フィクションではなく、“フェイク”ションというのがポイントだ。

始まりは、とある化石の発掘現場。さまざまな化石の骨が発掘されるが、チームが本当に捜しているのは「謎の骨」。それをめぐって物語は現代から中世、そして古代を往還する。3つの時代を通して深く切り込むのは生命倫理。いわば、現代科学の闇ともいえる。

一見難しそうだが、野田による言葉遊びやキャラクターの面白さに、ぐいぐい引き付けられる。その中で、タスケテは3つの時代を行き来するストーリーテラーのような役割も果たす。どこか純真でいて、チャーミング。阿部はその魅力を実にうまく出している。しかも、タスケテは物語の核となる人物。阿部の存在感が、観客を物語の奥深くへと誘う。

舞台俳優として培ってきた経験は、せりふ回しやしぐさ、動きにも表れる。ステージのどこにいても目を引く空気感に、確かな力を感じる。

※ザテレビジョン撮影

阿部サダヲ

ハイテンションな“謝罪師”から連続殺人鬼まで体現

映像作品でも、大人計画に所属してすぐにテレビドラマデビューを果たし、映画「トキワ荘の青春」(1996年)では、のちに藤子・F・不二雄となる漫画家の卵を演じ、ドラマ「池袋ウエストゲートパーク」(2000年、TBS系)では風俗マニアの交番巡査役に。

「木更津キャッツアイ」(2002年、TBS系)では、裏でヤクザと手を組んで悪事を働く、主人公たちの草野球チームのキャプテンに扮(ふん)するなど、キラリと光る存在感で頭角を現していった。

阿部のコミカルな演技を強く印象付けたのが、堤真一、柴咲コウと共演した映画「舞妓Haaaan!!!」(2007年)だ。阿部にとって長編映画初主演作であり、同じ大人計画に所属する宮藤が脚本を務めた。演じたのは、京都・祇園の舞妓と野球拳をしたいという夢のために、狂気的に突き進むサラリーマン。物語そのものに加え、阿部のハイテンションでエネルギーたっぷりの演技にも度肝を抜かれる。

「舞妓Haaaan!!!」の水田伸生監督と宮藤が再タッグを組んだ「謝罪の王様」(2013年)でも、架空の謝罪師という主人公をハイテンションに演じてみせた。

その間には、芦田愛菜、鈴木福と共演したドラマ「マルモのおきて」(2011年、フジテレビ系)や、病の妻のために不可能と言われた無農薬でのリンゴ栽培に挑んだ実在の人物を演じた映画「奇跡のリンゴ」(2013年)など、心温まるドラマでもファンを魅了している。

一方で、シリアスな役への振り幅も見せた。蒼井優とW主演した映画「彼女がその名を知らない鳥たち」(2017年)では、下品で不潔、何のとりえもないがヒロインに狂気にも似た愛を寄せる中年男を演じた。

映画「死刑にいたる病」(2022年)での稀代の連続殺人鬼役で見せたのは、外見は他の作品と大きく変わらないが、画面越しにも身がすくむような闇深いまなざし。コミカルな印象を封じた、シリアスな表現力のすさまじさを目の当たりにした。

※ザテレビジョン撮影

阿部サダヲ

「しあわせな結婚」で視聴者を引き付けた“格好良さ”

大河ドラマ「おんな城主 直虎」(2017年、NHK総合ほか)では、徳川家康を人間味ある人物にし、その2年後の2019年には「いだてん~東京オリムピック噺~」で大河主演を果たす。“ふてほど”という愛称で親しまれたドラマ「不適切にもほどがある!」(2024年、TBS系)では、コメディー感全開の演技で作品を盛り上げた。

さらに、2025年に放送されたマリッジサスペンス「しあわせな結婚」での演技も秀逸だった。松たか子演じる非常勤美術教師・鈴木ネルラと電撃結婚する弁護士・原田幸太郎を演じた。

笑顔を見せないミステリアスなネルラに振り回され気味の幸太郎。松もまたコミカルな演技が見事で、2人のあうんの呼吸によって、いくつものシーンに笑いが挟み込まれる。そして、ネルラの“秘密”によって、2人の愛が大きく揺さぶられていく。

本作での阿部は、コミカルさだけで引き付けるわけではない。「夫婦の愛とは」というテーマを突きつけられた幸太郎の心の動きを繊細に表現し、その人物像を際立たせていく。

同作の放送前に行われた取材会で、脚本を担当した大石静氏は阿部について、「圧倒的に芝居がうまい。そして、二枚目というわけじゃないけど色っぽいじゃないですか。そこも圧倒的」と称賛していた。その“色っぽさ”が本作では醸し出され、ドラマが進むにつれて“格好良い阿部サダヲ”に魅了される。最終回後には、視聴者からも「阿部さんがひたすら格好良かった」「ガチで格好良い」との反響が寄せられた。

コメディーとシリアスを自在に行き来する演技力は、作品ごとに異なる顔を見せるだけにとどまらない。

「しあわせな結婚」では、一つの作品の中でも双方を絶妙な加減で引き出し、物語を面白くしていた。監督や演出家、脚本家など制作スタッフからも称賛される阿部の芝居。「しあわせな結婚」で見せた幸太郎の姿に触れた後なら、舞台「華氏マイナス320°」での存在感もまた違った角度から楽しめそうだ。

【制作・編集:WEBザテレビジョン編集部】

※ザテレビジョン撮影

阿部サダヲ

Leminoで「しあわせな結婚」を見る

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