
撮影:永田正雄阿部進之介にインタビューを行った
俳優・山田孝之がメインパートナーを務める公開オーディション「THE OPEN CALL」。オリジナル映画の主要キャストを選ぶまでの過程に密着した「THE OPEN CALL -MAIN PARTNER 山田孝之-」が、10月1日からLeminoで独占配信されている。
応募資格は15歳以上で、性別・国籍・所属事務所の有無・演技経験を問わない、間口の広いオーディション。俳優を志す人々と選考に携わるパートナーたちは、審査を通じて「俳優とは何か?」に向き合っていく。このほど、本プロジェクトの企画プロデュースを務める俳優の阿部進之介に、応募者の芝居から見ようとしたものや、共に作品を作ってきた山田への思いを聞いた。
ト書きのない台本で見た、俳優の想像力
――「THE OPEN CALL」は、応募総数1万3796人という大規模なオーディションでしたが、審査に携わってみての印象を教えてください。
脚本ありきではなく、まず俳優がいて彼らに合わせて映画を作っていく試みなので、ずっと「良い俳優に会いたい」という目で見ていました。
撮影:永田正雄阿部進之介
――台本は、ト書きや句読点が一切ありませんでした。どういった狙いがあったのでしょうか?
演技の可能性が無数にある中で、本人が何を選ぶかを見ていました。「ありがとう」という一言でも、いろいろな芝居の選択肢があります。
でも、表面的な言い回しだけを作るのではなく、その人物がどういう人生を歩み、その瞬間にどんな気持ちを抱えているのかを考えてほしくて。そこを文字で説明してしまうと、答えを限定してしまう。
何もない状態から、自分で背景や感情の起伏を作り出せるかが試されているんです。僕は、良い俳優であればあるほど、良い脚本家でもあると思っています。
――「良い俳優は、良い脚本家でもある」とは?
台本の中のやりとりを基に、相手のセリフにどう反応すれば役の気持ちを表現できるか。これを組み立てていくって、自分で脚本を書いているのと同じなんです。だから良い俳優は、脚本を読んだときに「こう変えたらもっと面白くなるんじゃないか」と芝居のアイデアを出せるのかなと思います。
例えば「ありがとう」「ごめんね」というやりとりから、そこにいる登場人物の人間関係をいっぱい想像してみる。ト書きがないのはヒントがないっていうことだから、その分とても難しいです。だから事前に準備して、想像してくれたかどうかは、役者の芝居を見れば分かります。
撮影:永田正雄阿部進之介
――具体的に、どういったところでそれが分かりますか?
その人の感情が動いているか否かを見ています。例えば相手のセリフを受けたときにノーリアクションでも、全く響いていないからの「無」なのか、響いているからこその無なのかは、違います。
本当は小さくリアクションしているとかも。そういう細かな違いが起きるってことは、シナリオを読み解いて、相手の芝居が刺さる準備がすでにできているってことです。
――物語の中で、どんな感情や反応が投げ掛けられるか想像できていると。
それに「バカ」と言われたら激しく怒る人物なら、言われた瞬間に激高する演技になります。それを見た人は「こういう言葉に強く反応するんだな」とすんなり理解できます。
相手がいる芝居では、相手の言葉を聞いて何を感じているかが当然必要になってくるから、役作りができていれば、そうした反応は自然と豊かになっていきます。
――ご自身も俳優として、多くのオーディションに参加してきました。経験も踏まえて、オーディションに臨む俳優にとって重要なことを挙げるなら?
「選ばれよう」と思わないことですね。相手の求めているものを探って、それで選ばれようとすると、相手を見上げてしまうというか…自分軸がブレてしまうと思います。
以前ある方が話していて共感したのですが、「この脚本ならこういう演技ができます。面白いですよね?」と提案するつもりで臨んだ方が良いと思うんです。
――対等に提案しにいくと。
ある程度察する勘は必要ですが、同じ土俵に立って「こっちの方が面白いよ」という姿勢で来てくれる方が、個性も魅力もはっきりと伝わります。
撮影:永田正雄阿部進之介
海外の撮影現場で感じた違いと山田孝之への信頼
――そして「SHOGUN 将軍」など海外の現場を経験したことで、作品作りへの視点に変化はありましたか?
何もかもが経験なんですが…撮影の進め方が大きく違いました。北米だと「そこOK? じゃあとりあえずやってみよう」で、もうカメラを回していく現場が多くて。
テイクも何度も繰り返す前提で、動くからこそ分かる課題も出てくるから、それを潰していけばいいというスタイルです。よっぽど衣装が汚れたりするようなシーンでない限り、トライ&エラーですね。
――日本はその正反対、つまり事前の擦り合わせを重ねていくのでしょうか。
やっぱり、石橋をたたくというか…ディスカッションやテストで固めた上で本番にいきますね。どちらにも良さがあるから、両方の良い部分を組み合わせたハイブリッドなやり方ができたら、もっと面白い現場になるんじゃないかと感じています。
――これまでにも一緒に作品を作ってきた山田孝之さんについてもお聞きします。プロデューサーとしての山田さんはどういう存在ですか?
何をするにしても、核心を突いてくれる人。課題とか今やるべきこととか、要点をつかむのがすごく早くて。ミーティングでも彼がいてくれると本当に「こうだからこう」くらいのシンプルな議論で終わります。僕らを導いてくれるいいパートナーです。
撮影:永田正雄阿部進之介
――では、俳優としての山田さんにはどういった刺激を受けてきましたか?
20代で初めて共演したときからもう、僕がやっていない試みをやっているような人だったから、何でも聞きました。僕自身もいっぱい模索していたタイミングだったので、「何であのセリフが出たの?」「あれってアドリブなの?」みたいな小さなことから。
すぐ「そうだよ」みたいに明確な返事をくれるから、そこからも掘り下げていくことができて。彼と組むと、発見は多かったですね。
撮影:永田正雄阿部進之介
阿部が考える「俳優として生きる」ということ
――「俳優とは何か?」が「THE OPEN CALL」のテーマでもあります。阿部さんから、俳優として生きる人たちに伝えたいことは?
一つ言えるのは、「俳優を目指しています」って言ってしまったら、俳優じゃなくなるんです。山田もよく同じことを言うんですが…。「俳優です」って言い切れないのは、言い訳というか、自信を持てない要素や弱さがあるんだと思います。言い切れば、自然とプライドや力もついてくる。
オーディションだって、選ぶ方が偉いなんてことは全然ないです。勘違いしている人は多いけど。演技を作るのはプロデューサーにはできないし、俳優がいなければ作品は成立しません。
だから僕もプロデュースする側にいても対等に接したいし、「こんな魅力的な芝居を作れますよ」ってスタンスで来てほしいです。
【制作・編集:WEBザテレビジョン編集部】
撮影:永田正雄阿部進之介
撮影:永田正雄阿部進之介
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