ボクシングのスーパーバンタム級4団体統一王者、井上尚弥（大橋）が4日、横浜市の所属ジムで公開練習を行い、メディアのインタビューに答えた。井上はクリスマスイブの今月24日、東京・有明アリーナで世界ランキング1位、サム・グッドマン（オーストラリア）との防衛戦に臨む。

井上が年間3試合を戦うのは2017年以来、7年ぶりのこと。しかも今年は5月に4万3000人を集めた東京ドームでのビッグイベントをこなしており、心身への負担が心配されるが、本人は「今年3試合目ですが、コンディションを落とさず、維持してこられたので問題ない」とハイペースな試合間隔を歓迎した。

井上の気持ちを高めているのは、グッドマン戦をクリアした先に新たなプランが練られているからだろう。それは海外進出であり、現時点でボクシングのメッカとも言えるラスベガス、大型スポンサー契約を結んだ「リヤド・シーズン」の本拠地サウジアラビアが候補に挙がっている。

井上はこれまで海外で4試合をしているが、大橋秀行会長は「これまでとは意味合いが全然違う」と言葉に力を込める。確かに過去の遠征は、海外に井上の存在を知らしめるためだったり、コロナ禍で国内試合が難しくなったことでやむなくアメリカで開催されたり、という事情があった。状況はガラリと変わった。大橋会長が「ファイトマネーも当然高くなる」と明言したように、今後は海外からVIP待遇で招待されるのだ。

クリスマスイブのグッドマン戦は、そうした意味でも負けられず、勢いをつけたい試合と位置づけられる。そのグッドマンは26歳と井上より若く、戦績は19戦全勝8KOと無敗をキープしている。アップテンポなボクシングをする技巧派タイプで、世界ランキングはIBFとWBOで1位にランクされている実力者だ。

挑戦者について井上は「勝ちに徹するボクシングがうまい」と評価し、父の真吾トレーナーは「ポイントを取るのがうまいので、ポイントを取られないよう、自分のボクシングをしようと言っている」と対策の一端を明かした。

陣営はこの試合に向けて海外から計5人のパートナーを呼び、加えて「グッドマンとテンポ的に似ている」（井上）というアマチュアのパリ五輪代表、原田周大（専修大）の協力も得た。今回も世界の“モンスター”井上の有利が伝えられるのは当然だが、どんな状況にも100パーセントの準備を整え、「前回の自分を超える」のが井上流。引き締まった表情でシャドーボクシングとサンドバッグ打ちを2ラウンドずつ披露した公開練習でもまったく死角を感じさせなかった。

4年間で世界戦9連続KO勝ち。圧倒的な数字を残す“モンスター”は「僕の試合を初めて観に来るお客さんもいると思うので、ボクシングの醍醐味の一つであるKOシーンをお見せしたい。ボクシングに詳しいファンには細かい技術戦や駆け引きをお見せしたい」と貫禄のコメント。躍進の2024年を締めるにふさわしいファイトをファンに約束した。

取材・文＝渋谷 淳

【制作・編集：Blue Star Productions】

井上真吾トレーナー（左）、井上尚弥（中央）、大橋ボクシングジム会長（右）　/(C)Tomoo Aoyama

軽快なフットワークを披露/(C)Tomoo Aoyama

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(C)Tomoo Aoyama

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