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完璧なるプラン遂行。井上尚弥が鮮やかなアウトボクシングで“最強の挑戦者”を完封し、圧倒的な内容で判定勝ち【Lemino BOXING】

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9月14日に名古屋・IGアリーナで行われたスーパーバンタム級4団体統一タイトルマッチ。チャンピオンの井上尚弥(大橋)が“最強の挑戦者”と称されたムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)を3-0の判定で破って防衛に成功。これで世界戦は26連勝となり、ヘビー級のジョー・ルイス、5階級制覇のフロイド・メイウェザー(ともにアメリカ)が持つ史上最多記録に並んだ。

試合が決まったときから「今回は判定でもいい」と口にし続けてきたチャンピオン。ここまで世界戦で11連続KO勝利をマークしてきたが、自ら「キャリア最大の難敵」と話していたアフマダリエフ戦に向けて危機感を高めているように思われた。

「いつもと違う井上尚弥と、活き活きとした楽しそうな井上尚弥とが見られると思う。今回は強引なボクシングをする気はない。どんな勝ち方でも必ず勝ちを手にするという気持ち。KOにこだわらず、しっかりと勝つことだけを目的として試合を進めていきたい」

過去4試合で2度のダウンを喫し、32歳という年齢を受けて一部で衰えや限界説が囁かれ始めていた。だが、今回はこの事前コメントが意味すること、そして井上尚弥というボクサーの強さを存分に見せつけられることになる。

過去に奪われたダウンを「過信と油断から生まれたシーン」と分析し、アフマダリエフ戦に向けて事故が起こりかねない可能性を徹底的に排除。打ち終わったあとの防御動作にこだわりつつ、「技術、頭脳、フィジカルすべてで勝負。一瞬たりとも気の抜けない試合になる」と徹底的に勝利だけを目指した。そこには圧倒的な準備とシミュレーションがあった。

そのキーワードは「我慢」だ。

試合はフェイントの掛け合いからお互いに距離とタイミングを測る慎重な立ち上がり。井上は左ジャブからの右ボディを狙いつつ、軽快なフットワークを使ってアフマダリエフに有効打を許さない。しっかりと相手を見て分析しながら、「判定でもいい」という言葉どおりに絶対に負けない、そして打たれないという狙いが感じられるアウトボクシングを展開する。

アフマダリエフがガードも固めながらカウンターを狙うが、井上はしっかりとフットワークを使い、やや大振りになる相手のパンチも巧みなスウェーで回避。左右のワンツー、右のボディアッパー、左のボディ3連発などで少しずつ挑戦者にダメージを蓄積させていった。

井上は中間距離からボディを狙い、すぐに距離を取ってリスクをかけない戦い方を選択。一発を狙ってくる挑戦者の相手の動きを完全に見切って、アフマダリエフに手数すら出させず、有効打を許さない展開へと持ち込んでいく。

チャンピオンの軽快なフットワークは最終ラウンドまで全く落ちることなく、圧倒的な技術、スタミナ、スピードで試合を完璧にコントロールして最強の挑戦者にほとんど持ち味を出させることなく12Rが終了。ゴングが鳴った瞬間、IGアリーナには王者の強さを称える万雷の拍手が響き渡った。

まさに勝利を求めきった完璧な試合。世界戦の連続KO勝利は11でストップしたが、新境地を開拓したとも言える圧倒的な防衛戦だった。

試合後のマイクパフォーマンス、「アウトボクシングも行けるでしょ? 誰が衰えたって?」という開口一番のコメントに溜め込んでいた想いが溢れた。

「アフマダリエフ選手の実力をすごく評価していたから、こういう試合をすることができました」と話し、当日の体重もスピードやスタミナを考慮して調整。「倒しに行きたい気持ちをグッと抑えながら判定決着に考えを置いて戦っていた。倒しに行こうと思って打ち合いに挑んでいたら、また違った結果が待っていたと思う。だから今日はこの戦い方が大正解だった」

さらに「賢いボクシングを選択すればできるということも証明できた」とも続けた井上。KO劇を連発してきた強さとは一線を画し、完全な試合運びで最強の挑戦者を完封した意味は大きい。リスクを排除しながら試合中の分析も含めて相手の良さを消し、テクニックとスピードで圧倒して、ほとんどパンチをもらうことなく狙いどおりに判定に持ち込んで圧勝。正念場と思われたアフマダリエフ戦は、逆に彼の恐るべき強さを見せつける試合となった。

「アフマダリエフに対しての戦い方は100点をつけていい」と振り返る王者。相手に挑発されても「今日は自分の中で“我慢”が一つのテーマだったので、グッと堪えました。(KOを狙いに行くシーンは)作れたシーンはいくつもあったと思うんですけど、今日は判定で勝つという戦い方で良かった」と勝利に向けたプラン遂行を優先した。

「倒しに行かないことがこれほど難しいのかっていう発見はありました(笑)。本当に何回(倒しに)行ってやろうかと思いましたけど、そこを堪えて判定に持っていけたのが自分の中で良かった。判定でも魅せるボクシングができて、今日は今日で満足はしていますが、KOもボクシングの醍醐味として大事にしている。いずれにせよ、これからもいいボクシングをしていきたい」

所属ジムの大橋秀行会長も「この何年かで今日の試合が一番いい試合だった。KOもボクシングですけど、判定でも魅せられるボクサーになった」と新たな境地を披露したチャンピオンに最大級の賛辞を送った。

次戦は12月、サウジアラビアでのタイトルマッチが濃厚となっている。それを乗り越えた先には、WBC世界バンタム級王者の中谷潤人(MT)とのビッグマッチが待ち構えているとされている。試合後、リングから井上がマイクで叫ぶ。

「中谷くーん! あと1勝! 12月にお互い頑張って、来年東京ドームで盛り上げましょう!」

この日、会場に訪れていた中谷も笑顔で手を挙げて応える。場内は大歓声だ。

囁かれていた不安説を一掃し、「最強の挑戦者」に対して圧倒的な強さを見せつけて防衛に成功したチャンピオン。“新しい井上尚弥”が名古屋の地で披露したのは、さらなる未来に向けて戦い方の幅を広げる異次元の強さだった。

【制作・編集:Blue Star Productions】

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