

“J3ウォッチャー”として知られる平畠啓史さんが、気になるJ3の選手に直撃していくインタビュー連載。今回は2・3月度の明治安田J3リーグ月間MVPを受賞した栃木シティFCの田中パウロ淳一選手が登場。選手としてのセンセーショナルな活躍はもちろん、受賞理由に「ピッチ外での貢献」や「発信力」が挙げられるほどのSNSでのバズりが話題になった。J1川崎フロンターレでプロデビューし、関東リーグまでカテゴリを落としながら復活を遂げた話題の男が、選手としての原点から話題のゴールセレブレーション、そして苦しい時期に味わった経験まで、自分の現在・過去・未来について存分に語ってくれた。(※取材は2025年4月28日に実施)
平畠 今回のゲストは、栃木シティFCの田中パウロ淳一選手です。
パウロ お願いしま~~す!!! 待ってましたよ!!!
平畠 いま最も話題のJリーガーの一人と言っていいじゃないんですか? 相当、反応あるでしょ?
パウロ おかげさまでめちゃめちゃありますね(笑)。
平畠 そのあたりはあとで詳しくお伺いするとして、まずは所属の栃木シティFCが好調ですよね。手応えはどうですか?
パウロ 手応えはあるんですけど、相手が僕たちのデータを持っていなくて研究できないところが好調の要因かなと思っています。
平畠 相手にまだ“栃木シティはこういうチーム”だと認識されていないと。
パウロ 試合をしていても、選手の特徴をあまりつかめていなさそうな感じは見受けられるんですよね。だから「今のうちに勝たないと!」という気持ちはあります。JFLや地域リーグと違って、J3だと「お前がパウロを守れ」って一人に任せる感じがあるので、そこはやりやすいです。
平畠 松本山雅で2022年までプレーしたあとに栃木シティへ移籍しましたけど、当初は関東リーグだったわけですよね。すぐJリーグの舞台に戻れると思ってましたか?
パウロ いや、こんなにスムーズに昇格できるとは思わなかったです。だけど、栃木シティの選手や関係者全員にすごく熱量があるのは伝わってきていたので、イケるんじゃないかなという思いはありました。
平畠 ずっとJリーグにいて、いったん離れたわけですよね。その立ち位置からJリーグはどう見えていました?
パウロ 僕が(カテゴリーを)落としたこともありますけど、Jリーグには華があるとすごく感じていました。Jリーグじゃなかったら観てもらえないし、Jリーグというだけですごく応援してもらえる。おじいちゃんおばあちゃんにも「Jリーグすごいね」と言ってもらえることがありましたから。下に落ちたときに、「関東リーグって何?」って感じで(知名度は)正直、グッと下がりました。
平畠 同じサッカーですけど、周りの反応がぜんぜん違うんですね。だからこそ、上がりたい気持ちが強かったと。
パウロ めちゃめちゃ強かったですね。同じサッカーですけど、やっていても意味がないんじゃないかと思うくらい観てもらえる機会が少なくなりましたし、自分がやっていて大丈夫なのかといいう気持ちもありました。もちろんJFLや地域リーグの良さもすごくありますけど、圧倒的に観てもらえる回数が少ないので、一番頑張ったというか、どうにかしないといけない気持ちになったのはそこですね。

平畠 現時点では明治安田J3リーグでまだ1敗、個人的にはリーグ戦3試合連続ゴール中です。
パウロ 気持ちいいですけど、たまたまですからね。「絶対に決めてやる」という気持ちでは臨んでいないんで。攻撃力がウリのチームで、誰が決めてもおかしくない戦術なので、たまたまぼくが決めている感じです。
平畠 あれ、昔からそんなタイプでしたっけ?
パウロ いや、めっちゃオラオラしてました(笑)。「俺が何とかしてやる!」とか、「俺がスーパーなプレーを見せて目立ってやろう!」とか、そんな感じでした。
平畠 どのあたりから変わったんですか。
パウロ 栃木シティに来たタイミングですね。関東リーグで最初の5節くらいまでうまくいってなかったんですよ。それこそ「自分が何とかしてやろう」、「自分が何とかしないと」って気持ちが強過ぎて空回りしてしまうことが多くて。栃木シティは結構データを重視したサッカーをするところがあって、「パウロはいつも120%のパワーを出そうとしているから、100%でやれば大丈夫」と言ってもらえて。そこから少し楽になって、相手のスーパープレーにも自分が悔しがる必要がなくなって、気持ちの浮き沈みもなくなりました。「いつもどおり100%を出せばいい」と考えることでいい感じでプレーできたので、そこで気持ちが変わった感じです。
平畠 なんかおもろいですね。昔はもっとシュートを決めようとしていたわけじゃないですか。でも、気持ちが楽になったほうが、ゴールが決まったり相手を抜けたりするということでしょ。めちゃ不思議ですね。
パウロ そこは僕も不思議です。3試合連続でゴールを取れているのも、「絶対に決めたろ!」という気持ちではなく、点を決めちゃったと。
平畠 でも、パウロ流のトリッキーなドリブルはまだまだ健在ですよね。あれは観ていて面白い。ドリブルとか切り返しとか、あの独特のリズムはいつ身に付いたんですか?
パウロ 小学生のときに身長が低くて、通用しなくなってからやり始めました。ブラジルのストリートサッカーを観ていたんですよ。サッカー選手のシザースとかフェイントではなくて、ストリートサッカーの相手をあざ笑うようなプレーを見て、自分にも取り入れたいと思ったのが最初です。
平畠 いわゆるブラジルのストリートサッカーって遊びですよね。そこにルーツがあったのは知らなかったです。
パウロ 僕が見たかったというよりは、コーチに見せられた感じですね。背が小さいこともあって、プレーで目立つ必要がある高校のセレクションでは普通のプレーでは受からないよって。ちょうどその時期、野洲高校のスタイルが流行っていたんですよ。そこでやばいドリブルをしている楠神(順平)選手の姿を見て、これなら高校でも通用するんだと。
平畠 野洲の“セクシーフットボール”を見て、楠神選手や乾(貴士)選手を見て、「あれでイケるなら、俺もいけるんちゃうか」と。
パウロ 背が低かったので、これならいいんじゃないかって感じですね。ちょうど中学生のときに野洲高校のグラウンドで試合をしたんですよ。そこで大雨の中、乾選手が一人でドリブルをしていた光景を見てから、僕もドリブルの練習を大雨でもバンバンするようになって力が付きました。
平畠 僕らは雨が降ったら練習はイヤだし、練習着は汚れるし、グラウンドに出たくない。普通はそうでしょ(苦笑)。
パウロ 僕もそうでした。雨だと練習をやめなきゃいけないのがルールというか、体に染みついている感じでした。そのときも他の選手は雨宿りしていたはずですけど、乾選手が一人だけ練習していたことをめっちゃ覚えていて、それは結構ガツンときましたね。
平畠 やっぱり、乾選手はすごい。
パウロ 当時は“乾選手”としては見ていないですよ。雨の中でめっちゃドリブルしてる“やばいヤツ”みたいな(笑)。でも、当時のチームはドリブルする環境がなかなかなかったので、すごく大きなきっかけになりました。

平畠 Jリーグでは最初に川崎フロンターレに加入して、そこからツエーゲン金沢、FC岐阜、レノファ山口FC、松本と移籍しました。やっぱりどのチームにも思い入れはありますか?
パウロ ありますね。全部やっているポジションが違ったので、その思い出もあります。
平畠 少し前に松本とのアウェイゲームがアルウィンでありました。
パウロ 何かいいものを残せたらとは思っていましたけど、自分が何とかしてやろうという気持ちは一切なくて。ブーイングもめちゃされましたけど、それは愛として伝わってきてすごくうれしかったです。試合中は向こうも勝ちたいからブーイングするけど、それに対して何も感じることなくプレーできたので、山雅時代がダメとか、Jリーグにいた期間がダメということではなくて、栃木シティに来たことが良かったと感じられた試合でしたね。
平畠 その試合でもゴールを決めました。非常に落ち着いて決めたように見えました。
パウロ 前日の紅白戦で全く同じシチュエーションがあったので、「来た! 昨日のやつだ」と思って、思いっ切り同じところに蹴りました。全く一緒のシーンだったのでスムーズに持ち運べましたね。だから、ウタカはあまり見えていないです(笑)。めっちゃ「出して!出して!」って言っていて、ウタカがいたのは分かってましたけど、自分でイケると思ったので、かなり集中できてましたね。
平畠 観ている人は、パウロ選手のゴールパフォーマンスを期待していたと思いますけど、そこは松本へのリスペクトを込めて何もしなかったですね。
パウロ さすがにできないなと。山雅からしたら悔しいじゃないですか。
平畠 あそこでゴールパフォーマンスをしなかったパウロ選手の表情が印象的で。抑えているというか、いろいろな感情があるんだろうなと思って、感情移入して、感動したんです。今年はいろいろなところで言われていると思いますけど、ゴールパフォーマンスがめっちゃ注目されてますよね。そう言えば、たまたま僕が実況担当だった試合で「エッホエッホエッホッホ」の新パフォーマンスが出たんですよ。でも、それを知らなくて……困るんですよね(苦笑)。その前の「ダディダディ」も知らなくて、パウロ選手がやったから知ったんです。それで自分が実況しているときに「ダディダディ」が出たら言おうと思っていたのに、全く知らないパフォーマンスをやり出したから何も言えなくて黙ってしまった(笑)。
パウロ ほかのところからも「先に言っておいてほしい」ってめっちゃ言われます(笑)。
平畠 ゴールパフォーマンスはどうやってセレクトしてるんですか?
パウロ まずは子どもが知っているものがいいなとは思ってますね。“パウロシート”という子どもたちの招待企画をしていて、そこからのリクエストで「西山ダディダディ」をやったんです。その反響が良くて、子どもたちも喜んでくれて、いろいろ覚えてもらえる。そういう感じですね。
平畠 毎日TikTokをチェックし続けて探しているのかと思ってました。
パウロ リサーチは毎日やってますよ(笑)。そこでいろいろと入ってきますけど、たまたまやったパフォーマンスの反響がすごく良かったので続けています。
平畠 もともと田中パウロ淳一という選手も知っていた人もいますけど、SNSやTikTokから知った人もたくさんいるでしょ。それはありがたいですか?
パウロ もうめっちゃありがたいですし、一度地域リーグまで落ちたからこそ、応援してもらえる価値に気付づくことができたと思っています。Jリーグから一度離れてみたことでめちゃめちゃ感じました。それこそサッカーをやっている意味があるのかと感じたこともありましたし、だからこそSNSで知ってもらうことも頑張らなければと思うようになりました。
平畠 TikTokをやり始めたのは、Jリーガーの中でもかなり早かったですよね。きっかけはあったんですか?
パウロ 早かったと思います。コロナ禍の時期にちゃんとやろうと思ったのが最初ですね。
平畠 「選手がそんなんやってどうなん?」という声はありません?
パウロ ずっとありますよ。いまもそうです。でも、そこも含めて僕だと思ってもらえることが増えたので、やって良かったと思います。
平畠 時代がポジティブに受け入れてくれていますよね。
パウロ そこはめちゃめちゃありがたいと思っています。栃木シティは寛容で何をしてもOKなくらいな感じでSNSをやっているので、どんどん発信もしますし、その一方でサッカーでもしっかり結果を出さなければという気持ちにはなっています。
平畠 試合後、スタジアム場外のイベント会場でインタビューも受けるなど、栃木シティはお客さんとの触れ合いもすごく大事にしている印象があります。
パウロ そうですね。もともと地域リーグにいた選手が多いこともあって、Jリーグのありがたみを分かっている選手が多いです。僕たちのスタジアムは田舎にありますけど、このスタジアムに来たときだけは田舎とは違う環境だと思ってもらえるように心がけてやっています。

平畠 今シーズンは開幕ダッシュに成功しています。チームと個人の目標はどこに置いていますか?
パウロ 個人の目標は全くないんですよね。チームの目標であるJ2昇格に対して、みんなで熱量を持って進んでいる感じです。ただ、J3とJ2はかなり違うと感じているので、どんどん栃木シティの価値を上げていきたい。僕の場合はうまくいかなかった時期もあるので、その経験を若手に還元できたらと思っています。才能のある若手が多いですし、栃木シティと一緒に昇格したり、もしかしたら他クラブに引き抜かれることがあるかもしれないですけど、そうやってみんなで上に向かって行けたらと思っています。
平畠 これからもプレーだけでなく、SNSの発信も楽しみにしていますね。でも、ピッチ外の取り組みにも真剣に取り組んでいくという発想になったことがすごい。
パウロ そこはもともと川崎フロンターレにいたことが大きいですね。あそこは何でもありでしたから(笑)。だから、そういう目線は常に持っています。
平畠 お客さんを大事にしながら積極的に発信していくという“フロンターレの精神”が心に残っていると。
パウロ それは間違いないですね。あの時期があったからこそ、今の自分があるとすごく感じます。一つの原点でもありますし。
平畠 すごいなー。いろいろな経験をしてきたけど、全部つながっているんですね。そしてこれからもどんどんTikTokにコンテンツを載せていくわけですよね?(笑)
パウロ そうですね。どんどんやっていきたいです。だからJリーガーのみんなにはパウちゃん企画のためにどんどんスーパープレーを出してもらいたいですね(笑)。
平畠 そこも期待しておきましょう。これからもプレーとSNS発信の両方を楽しみにしています(笑)。頑張ってください! 今日はありがとうございました!
【制作・編集:Blue Star Productions】
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