
覚悟を胸に臨んだ再起戦は、笑顔なき判定勝利──。前WBO世界バンタム級王者の武居由樹(大橋)が2日、東京ドームで行われた『NTTドコモ presents Lemino BOXING ダブル世界タイトルマッチ』のセミファイナルに出場。スーパーバンタム級への昇級初戦でWBAスーパーバンタム級15位のワン・デカン(中国)と対戦して2-0のスコアで判定勝ちを収めた。
武居の判定勝利を告げるアナウンスに、東京ドームにはブーイングに近いどよめきが巻き起こった。この状況が何より武居の苦戦を象徴していたと言っていい。昨年9月のWBO世界バンタム級タイトルマッチでクリスチャン・メディナ(メキシコ)に4回1分21秒TKO負けを喫し、3度目の防衛に失敗していた武居にとっては、完全復活に向けた再起戦。東京ドームという大舞台でしっかりと成長を見せつけたい試合でもあった。
今から8カ月前、衝撃の敗戦に涙を流し、「自分が負けることは想像していなかった。現実を受け入れられなかった。このままじゃ終われないし、勝たないと先に進めない。次は内容も問われる」と意気込んで迎えた試合は、階級を一つ上げたスーパーバンタム級世界ランカーとのノンタイトル8回戦。「勝たなきゃ終わりだと思っている」という覚悟を胸に秘めて試合に臨んだ。
序盤は武居が足を使って回り込み、軽快なフットワークを見せていく。距離を取って様子を見ながらパンチを合わせる作戦。上下に打ち分けてリズムを作り、重いパンチを持つワン・デカンをスピードで上回ろうとしていった。
だが、相手が徐々に圧力を強めて前進してくると、左右の連打を食らって足が止まり、ロープからコーナーに押し込まれるシーンが目立つ。パワーで劣勢に追い込まれたメディナ戦に似た展開になり、手数こそ出していくものの、回り込んでの撃ち終わりをカウンターで狙われてしまうようになる。
なかなか自分の“怖さ”を出していけない武居。じわりじわりと前に出て追い込んでくるワン・デカンのプレッシャーを受け、動かされてスタミナを消費していくにようになってしまう。それでもロープに追い込んでの左右連打、見えない角度からの強烈な右アッパーなど有効打を繰り出して意地を見せていった。
ワン・デカンの圧力はフットワークで交わしていくものの、相手を倒し切るほどの強打は放てず。最終盤に右ストレートを当ててぐらつかせるが、倒すには至らずに全8ラウンドが終了。最後まで勇気を持って前進してくるハードパンチャーを上回る強さを見せつけることはできず、決着は判定へと持ち越された。
結果は77-75、77-75、76-76の2-0で武居の勝利。判定負けをも覚悟していた場内からはどよめきが起こり、武居本人には勝利選手インタビューを含めて一切の笑顔はなし。天を仰ぎ、四方に頭を下げてあいさつし、首を振りながら謝るような仕草を見せてロッカーへと戻っていった。一方、判定で敗れたワン・デカンにはリングを降りる際に場内から大きな拍手が送られた。
試合後会見に臨んだ武居は「正直、もっと成長した姿を見せたかった。こういう大きな大会でセミファイナルを任せてもらったのに、悪い武居由樹が出てしまった。(相手との)撃ち合いには付き合わないようにしていたが、ワン選手のハートがすごく強かった。目にダメージを与えても強い気持ちで前進してきた。ハートの強い選手でした。今日は勝ちに徹すると言いながら、どこかで倒さなければという気持ちがあったので、それができなかったのは自分自身すごく悔しい。どこか集中しきれていなかった自分がいた。自分が弱かった」と悔しさをにじませた。
八重樫東トレーナーは「合宿明けのスパーリングで足を痛めていた。それを引きずっているところはあったが、それは言い訳でしかない。すべてが中途半端になってしまったような状況で。コンディションとしてはケガを引きずっている中での動きだったので、それは織り込み済みとして進めなければならなかった」と説明。加えて武居の今後については「未定です」とだけ話した。
この日はWBCバンタム級タイトルマッチで井上拓真が井岡一翔を破り、同級への挑戦権を持つ那須川天心との防衛戦が取り沙汰される中、那須川とのライバル対決が期待されていた武居にとってはこのままスーバーバンタムに昇級していくのか、バンタム級に戻してチャレンジするのかの見通しが立たなくなってしまった状況だ。試合後のリング上で「こんな大きな大会で、こんな大したことのない試合をしてしまった」と反省の弁を述べた武居。ここから彼がどんな復活ロードを歩んでいくのかに注目が集まる。
文=青山知雄
写真=Lemino/SECOND CAREER/NAOKI FUKUDA
【制作・編集:Blue Star Productions】
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