

高校2年生が決めた衝撃のJ公式戦デビュー弾。17歳の清水エスパルスMF土居佑至が冷静なフィニッシュで勝利を決定づける一撃を沈めた。
3月26日に行われた2025 JリーグYBCルヴァンカップ1stステージ1回戦。アウェイでSC相模原と対戦した清水は、後半のゴールラッシュで3─1と勝利。その試合で大きく輝いたのが、ユースに在籍しながらトップチームの公式戦に出場できる第二種登録を済ませたばかりの若きアタッカーだった。

17歳10カ月14日の若さでピッチに送り込まれた背番号42が、大きな仕事をやってのけた。72分に途中出場で初めてJ公式戦の舞台に立つと、85分に右サイドから全速力でゴール前へと駆け上がり、左からの鋭い折り返しに対して巧みに体を開いて左足を合わせる。「GKが流れてくるのが見えたので、逆サイドに流し込むだけだった。すごくリラックスして打つことができた」という高校生とは思えないような落ち着きでダメ押しの3点目を叩き込んだ。
「試合前もピッチに入る直前もワクワクしていましたし、いい緊張感はありましたけど、すごくリラックスして入れたので、それがピッチの中で少しは表現できたかな」と笑顔を見せる17歳は、絶好のチャンスに「来た! 待ってました!」と楽しみながらプレーできる余裕を見せ、自らのデビュー戦に鮮やかなゴールで花を添えた。このメンタルには秋葉忠宏監督も「今の選手には珍しく、勝ち気なメンタリティやギラギラした野心がものすごくある選手」と称賛する。


J公式戦ではクラブ歴代3番目の若さで決めた得点だ。昨年4月20日に17歳4カ月4日で決めた西原源樹(明治安田J2リーグ第11節ベガルタ仙台戦)、2012年6月6日のヤマザキナビスコカップ予選リーグ第5節コンサドーレ札幌戦で17歳8カ月16日で得点をマークした石毛秀樹(現ウェリントン・フェニックス/ニュージーランド)というアカデミーの先輩たちに続く記録となった。
そして試合後のフラッシュインタビュー、殊勲の若武者は「偉大な先輩からアシストしてもらえてうれしい」と話した。記録にも記憶にも残る土居のデビュー弾を演出したのが、ユースの大先輩でもある北川航也だった。
アシストという形で後輩のゴールを導いたキャプテンには、試合前から秘めた想いがあった。その胸中を北川が明かす。
「今日はユースの選手にチャンスがあったら、いいプレゼントをしてあげたいと思っていたんです」
GKからリズム良くビルドアップし、左サイドの北爪健吾が出した縦パスに北川が鋭く抜け出す。少し持ち運んで中へ折り返そうとしたところで「マイナスに走り込んでいた松崎(快)選手を使う手もあった」と振り返るが、その奥からいいタイミングで走ってくる17歳の姿が見えた。2点リードの状況と自らの想いを受けて、チームキャプテンは後者を選択。彼が走り込んでくる先にピンポイントで左足のグラウンダークロスを送り、土居の記念すべきデビュー弾を引き出した。
試合前日から「いいプレゼントをしてあげたい」と考えていた北川は、自身の記憶を呼び起こしていた。2015年5月20日のヤマザキナビスコカップ予選リーグ第5節名古屋グランパス戦、自分がプロ1年目で決めた初ゴールが、アカデミー出身の枝村匠馬(現藤枝MYFCコーチ)からアシストしてもらったものだったからだ。
「自分も先輩たちに支えてもらったからこそ、ここまでやってくることができたので、今日は逆に若い選手たちをピッチの中で助けられたらという想いでした。アシストできたことが一番のプレゼントかなって思う反面、まだプロではないですけど、若い選手たちの力はこのチームに間違いなく必要だし、彼らのためにも結果を付けてあげたかったので良かった」
80分に途中出場していた北川が、ピッチに立ってからわずか5分で想いを結果につなげた。その背景には、自らも育ててもらったアカデミーへの強烈な想いがあった。
「やっぱりユース出身であることを誇りに思ってプレーしなければいけないと強く思っています」

反町康治GMが“サステナブル(持続可能)なチームづくり”を掲げ、アカデミーの重要性を再認識しながら育成型クラブへの道を追い求めている清水。秋葉忠宏監督が試合後の記者会見で「我々の育成組織で育った10代の選手たちが躍動して結果を出したことは、育成型クラブとしては非常に素晴らしいこと。こういう循環がもっともっと活発になるようにしたいですし、ユースだけではなくて、ジュニアユース、ジュニアとつながっていって、我々は清水エスパルスというクラブとして素晴らしい選手をどんどん輩出できるようにやっていきたい」と語れば、北川も「非常に大事なことですよね。エスパルスを見て育った選手や地元の選手が頑張って、小さな子どもたちの目標になるという意識は常に持たなければいけない」とアカデミーの重要性を口にする。まさにクラブとして目標とするものを一つ体現する結果にもなった。
試合後、中継のフラッシュインタビューを終えて一人であいさつに向かう17歳を、オレンジのゴール裏サポーターが大声援で迎え入れる。そこでは昨シーズンまで5年間にわたって10番を背負ってきたカルリーニョス・ジュニオ(現ジェフユナイテッド千葉)のチャントが受け継がれていた。
「昨年の高円宮杯プリンスリーグでも歌ってもらって聴き慣れてはいましたけど、まさか今日もこういう形で歌ってもらえるとは思っていなかったので、すごくうれしかった。あれだけの大人数の歓声は初めてですし、自分のゴールでたくさんの方に喜んでもらえてとてもうれしかった。また聞きたいと思いました」
もちろん土居に受け継がれたのはチャントだけではない。北川が先輩から受け取っていたものを、しっかりアカデミーの後輩へつなぐ役割を果たした。“ニューヒーロー”の活躍を引き出した北川は「自分のプロ初ゴールもアカデミーの先輩だった枝村さんからのクロスだったことを思うと、やっぱり感慨深いものがありますね。もう10年くらい前の話ですけど(笑)。プロで決めるゴールはまた格別なものがあるので、これからも本当に引き続き頑張ってほしい」とエールを送る。
もちろん物語はこれで終わりではない。北川自身もゴールで自分自身とアカデミーの存在価値を証明していかなければならないし、他のアカデミー出身選手も先輩たちからのバトンはしっかりと受け取っていることだろう。そしていつの日か土居が北川の想いをつなぐ形で後輩にアシストする日が来たら、それこそ胸熱だ。長いクラブ史の中で土居のJ公式戦初ゴールは、ほんの小さな出来事かもしれない。ただ、そこには清水エスパルスが受け継いでいくべき大切な想いが詰まっていたように思う。

取材・文=青山知雄
写真提供=清水エスパルス
【制作・編集:Blue Star Productions】
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