

“J3ウォッチャー”として知られる平畠啓史さんが、気になるJ3の選手に直撃していくインタビュー連載。今回はザスパ群馬でプレーする風間宏希選手。偉大な父・八宏氏の長男として生まれた彼は、幼少期から海外での生活を経験し、父の影響も受けながらサッカーとともに人生を歩んできた。国内外多くのクラブに在籍し、数々の挑戦を重ねてきた司令塔は2022年、本人の強い希望もあって2018年に期限付き移籍していたザスパ群馬に舞い戻り、クラブへの貢献を誓ってピッチを駆ける。そんなゲームメーカーの素顔と想いに平畠さんが直撃した。(※取材は2025年10月30日に実施)
平畠 シーズン終盤に取材を受けていただきありがとうございます。風間選手は2018年ザスパクサツ群馬(当時)でプレーしていて、そのあとFC琉球に移籍して、もう一度群馬に戻ってきました。もちろんオファーがあったからでしょうけど、相当な気持ちを持って帰ってきたということですよね。
風間 心のどこかに「もう一回群馬でプレーしたい」という思いがずっとありました。それも自分の体がしっかりと動いて、チームに貢献できるときに戻りたいと思っていました。それが3年前ですね。そのタイミングで自分の中で琉球に残るか、群馬に行くかという選択肢しかなかったですし、その想いは代理人にも伝えていました。そこでちょうど群馬からオファーをいただけたので、ラストチャンスだと考えて戻ってきました。
平畠 最初に在籍したときはモンテディオ山形からの期限付き移籍でしたよね。どうしてもう一度群馬でプレーしたいという気持ちになったんですか。
風間 最初の群馬での1年間が楽しかったのもありますし、J3からJ2に上げられなかった責任も感じていました。琉球の選手として群馬でのアウェイゲームに来たときも温かく迎えてもらえている感じがあったので、いろいろな理由で「最後に群馬でプレーできたらいいな」と思っていました。
平畠 群馬生まれでもないですよね。群馬という土地が体になじんだんですかね。
風間 何か群馬に惹かれるものがあったんでしょうね。あとはもともと所属していたモンテディオ山形で試合に出られなかったタイミングに拾ってもらった恩は大きかったです。山形に行く際は数チームからオファーをいただいていて、そこで選んだチームで思うように出場機会を得られず、期限付き移籍先を探していたときに群馬から熱心に誘ってもらいました。そこから自分のサッカー選手人生がまた伸びた実感があったので、あらためて群馬に貢献したいと思ったのが帰ってきた理由の一つではあります。
平畠 サッカー選手って「あのチームに戻りたいなー」と思っていても、全員が戻れるわけではないですもんね。普通、移籍する際は悩むと思いますけど、群馬に戻ってくるときは悩みもなく?
風間 悩みがなかったわけではないですね(苦笑)。琉球にもすごく感謝していましたし、いいオファーもいただいていたので。でも、頭の片隅には常に群馬のことがあって、「まだ体が動くタイミングで行かないと、群馬のためにならない」と考えて決断しました。
平畠 サッカー選手ってすごいですよね。沖縄は車社会だから、道も覚えて、行きたいところにも行けるようになって、徐々になじんでいったわけじゃないですか。それなのに、また群馬に戻ってきて、新しい練習場も含めてなじんでいくわけでしょ。
風間 それもまたサッカー選手のいいところかなと思っています。いろいろなところに住めて、プレーできることが、僕はすごく好きなので。今までも長く在籍するよりも、チャンスがあれば新しい環境に飛び込んでチャレンジすることを選んできました。
平畠 それは子供時代に海外に住んだり、いろいろなところで生活していた影響もあるんですかね。
風間 あるかもしれないですね。幼少期に海外に住んでいたときは苦労しましたけど、その苦労があったおかげで、いろいろなところに行っても楽しく生活できるようになりました。自分は同じチームで3年くらいプレーすると、“このチームでの自分”はある程度認知してもらえるけど、自分にはもっと違う可能性があるんじゃないかと思うときがあるんですよね。チームを変えることが新たな成長につながるんじゃないかという考え方があるので、そういう理由で決断するときもありました。
平畠 サッカー選手はみんな、自分のキャラクターを突き詰めていくでしょうけど、それにプラスして、もっと違うことが自分にできるんじゃないかなと。
風間 新しい監督が来ることでチームは変わりますけど、監督もそのチームでのプレーを見て考えると思うんですよね。でも、違うチームに行けば、そこにはそこでの色があって、最初は苦労するかもしれないですけど、そこで順応できたときにまた違う選手になれるかなと思っています。
平畠 今までと違う選手たちとプレーすることによって、刺激をもらえると。
風間 そうですね。それまで対戦相手だった選手と一緒にやってみると、「こういうところがすごかったんだ」とか「こういうところがいいな」と思ったり、まねしようとしたりして、いろいろな発見ができるのはすごくいいですね。


平畠 今年で34歳になりました。一般的にはベテランという見られ方や立ち位置になってくると思いますけど、自分としては一人のサッカー選手として数字が上がっていくだけという感じですか?
風間 まだまだサッカーがうまくなりたい気持ちはもちろんありますし、このチームの勝利に貢献したい気持ちもずっとあります。ただ、30歳を超えて、プロサッカー選手としての終わりを見ているわけではないですけど、どうすればいいサッカー選手人生を送れるんだろうとは少し考えるようになりましたね。
平畠 以前は考えなかったですか?
風間 全く考えていなかったですね。これまではどこでプレーするかとか、お金で判断するとかではなくて、そのチームが自分に対してどのくらいの熱量を持ってくれているかで移籍先を決断してきたところがありましたけど、最近はそこに違った感覚があります。
平畠 年齢を重ねるにつれて、見えてくるものが増えてくるんでしょうね。
風間 最近はピッチ外のことを見るようになりましたね。ピッチ内で言えば、若いときは一度ミスをしたら、90分間ずっとうまくいかないまま過ごす試合もありましたけど、そういう試合は徐々になくなってきて、仮にミスをしたとしてもある程度は安定したプレーをできるようになりました。経験が増えると同じような場面が多くなり、瞬間的な選択でも迷いづらくなるところはあると思います。
平畠 「こういうシーン、前もあったな」みたいな。
風間 そうですね。ただ、経験をしてきたぶん、ちょっと縮こまっているというか、「安全なほうに逃げたな」と思う場面もあるので、そういうときは悔しいですよね。
平畠 若いときは怖さを知らないぶん、できるプレーもあると。
風間 どれだけ先輩たちに支えられていたのかが、今になってよく分かります。自由にやらせてもらっていたことに気が付きました。だから反対に、自分が行けばいいところで若手がチャレンジさせてリスク管理に回ることもあるので、そういうプレーも大事ですけど、自分がもっと攻撃で違いを見せなければいけない部分もある。「もっとやらなければいけない」と思うことも多いですね。
平畠 見方、考え方は変わってきているかもしれないですが、日々の楽しさは変わらないですか?
風間 若いときは、「次の試合に出るために、今日の練習で俺が一番いいプレーをする」という思いで頑張っていました。もちろん今もその想いは変わらないですけど、今は試合に出られなかったら自分を見つめ直してやれることをやって、チームのためにいい行動をしなければと考えながらやっています。若いときは自分のイライラが出てしまっていたと思いますけど、昔よりは落ち着いてチームのためにできることをやろうという想いが大きくなっていると思います。
平畠 これまでもいろいろとお話しさせてもらって、「穏やかな人やな」と思っていましたけど、イライラするタイプでもあったんですね(笑)。
風間 僕の若手時代を知っている人だったら、イライラしているかどうかが見ているだけで分かると思います(笑)。もともとは短気でカッとなりやすい性格なんですけど、自分の中でなぜイライラしているのかを考えていくと、結局は自分の責任だと思えることだと分かってからは、その波がなくなりましたね。
平畠 サッカー選手って自分と向き合うことが増えますもんね。
風間 そうですね。自分と向き合えない選手は、どれだけ才能があっても上に行けないと思います。だから、ベクトルはできるだけ自分に向けなければ長くプレーはできないと思います。
平畠 そうは言っても、私生活でも腹立つなと思うことはたまにはあるでしょ?(笑)
風間 ありますけど、そのときも冷静になって、人にぶつける場面はないですよ。奥さんとケンカすることもないですし、イライラすることはサッカーに関する内容が多いですね。その日の練習がうまくいかないとずっとモヤモヤしていて、次の日にいいプレーをすれば一度リセットされるし、またダメならモヤモヤしているし、ずっとその繰り返しです。だから、いいプレーができた日は気持ちいいですけど、できなかった日は車の中でちょっと暗い感じで運転しています。
平畠 それはどうやって解消するんですか?
風間 試合に近くない日だったらトレーニングします。家でバイクをこいだり、ジムに行って発散したり、「これをやったから明日はできる!」と思って過ごしていますね。もう精神安定剤みたいな感じです(笑)。
平畠 酒に逃げたり……とはならないわけですね(笑)。
風間 ならないですね(笑)。
平畠 普段の気分解消はどうしていますか?
風間 基本的にイライラする原因はサッカーしかなくて、その解消方法もサッカーしかないので、景色を見ても、映画を観に行っても、ずっとモヤモヤしていますし、奥さんと話していても「絶対に聞いていない」と思われていることもあると思います。
平畠 奥さんは分かっているでしょうね。「今日、練習がうまくいかなかったんだろうな」と。
風間 でも、そこで会話をして少し楽になることはあります。そして、落ち着いてきたらバイクを漕ぎます(笑)。
平畠 バイクは漕ぐんですね(笑)。奥さんからすれば、「また漕ぎだしたよ」となっているんでしょうね。でも反対に、「今日のボールタッチはすごくうまくいった」というときもありますでしょ。
風間 あります。他の人が誰も分かっていないようなプレーでも、「あの密集地帯の抜け出しは良かったな」みたいな。そう思うだけで自己満ですけど、ちょっと気持ちが楽になります。練習の映像を見返して、そのいいシーンを巻き戻しながら5回くらい見るときもありますね。
平畠 すごく大人だなと思う部分と、サッカーをやりはじめたときに感じていたシンプルな喜びがあるんですね。
風間 それは常に感じています。だからこそ、続けられているというのはありますよね。どうしても年齢を重ねてくると、あと少しでサッカー選手が終わると思ってしまいがちですけど、いろいろなプレーを観ると、まだできるという活力になるというか、もっとうまくなりたいと。その二つが循環している感じですね。
平畠 サッカー選手って、いろいろとあると思いますけど、一番はシンプルにボールを蹴っていることが楽しいんでしょうね。
風間 本当に幸せだと思います。サッカーを好きでやっていて、そのまま生活できて。こんなに幸せなことはないと本当に思いますね。
平畠 サッカーをやっていなかったら何をやっていたんですかね。何か浮かびますか?
風間 浮かばないですね。小さい頃からサッカー選手になると思っていたので、それ以外を考えたことはないです。父が選手(風間八宏/現南葛SC監督。現役時代はドイツやサンフレッチェ広島でプレー)だったこともあって、子供の頃は誰でもサッカー選手になれると思っていて、小学校の友達も全員サッカー選手になると思っていました(笑)。さすがに高校生になれば分かりましたけど。だから自分はサッカー選手になれて本当に幸せだと思います。
平畠 お父様の存在もあって、「みんなサッカー選手になれるんでしょ」と思っていたわけですね(笑)。
風間 サッカーが好きなら、サッカー選手になれると思っていました(笑)。
平畠 すごいな、面白いな(笑)。人間としても選手としても純粋だから、観る側も「うまくいった、ミスした」と見るだけでなく、サッカーを楽しんでいる風間選手を観ることで楽しくなるかもしれないですね。
風間 そういうプレーはもっとやっていかなければと思っています。選手によって考え方は違うと思いますけど、いろいろな選手が試行錯誤してやっていると思いますね。
平畠 それが面白いですよね。それぞれ、置かれている立場も違うし、メンタルの状況も違うし、そういう人たちが一つになって戦っているからおもろいというか。
風間 そういうことを発信してもらえれば、ファン・サポーターの方にも楽しんでもらえそうですね。

(プロフィール)
風間 宏希(かざま・こうき/ザスパ群馬/MF 15)
1991年6月19日生まれ、広島県出身。身長177cm、体重74kg。高いパスセンスを武器に攻撃を司るプレーヤー。元日本代表MF風間八宏氏の長男として生まれ、父の海外移籍に伴って幼少期にドイツでの生活を経験。自身は清水商業高校(現清水桜が丘高校)卒業後に渡欧し、ロウレターノ(ポルトガル3部)、コブレンツ(ドイツ4部)でプレー。2012年7月、父が指揮する川崎フロンターレに加入し、Jリーグデビューを果たした。川崎Fで1年半プレーした後、ギラヴァンツ北九州に移籍して中盤の要として活躍。3シーズンでリーグ戦122試合に出場するなど結果を出した。17年にモンテディオ山形を新天地に選択し、翌18年はザスパクサツ群馬(当時)へ期限付き移籍して31試合7得点の活躍。19年~21年までFC琉球で中心選手として君臨したが、本人の強い気持ちもあって22年にザスパ群馬へ完全移籍を果たした。J1通算17試合出場0得点、J2通算358試合出場21得点、J3通算45試合出場8得点。
(※データは2025年11月14日現在)
【制作・編集:Blue Star Productions】
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