苦難を乗り越えてきたプロアスリート本人が、個々の競技人生を変えた「最大の挫折」と「復活」の物語を自らの言葉で語るリアルドキュメント「NumberTV」(全24回)の第5回が9月26日に配信。前野球日本代表監督・栗山英樹氏が登場し、選手時代に味わった“人生初の挫折”などを語った。(以下、ネタバレを含みます)
現役時代、監督時代の挫折を語る
「NumberTV」は、福士蒼汰がナビゲーターを務め、トップアスリートたちの輝かしい「現在」とそれに至るまでの「挫折」をアスリート本人が語るリアルドキュメンタリー番組。数々のアスリートのドラマを伝えてきたスポーツ総合雑誌「Sports Graphic Number」とLeminoの共同プロジェクトによって誕生した。
第5回に登場したのは、東京ヤクルトスワローズで現役引退後、2012年から北海道日本ハムファイターズの監督を10年間務め、リーグ優勝2回、日本一1回という実績を残した後、2023年には侍ジャパンを率いる監督としてWBC優勝を果たした栗山氏。日本中の期待を背負いながら、見事に重責を全うした栗山氏が、苦汁をなめた“挫折”とその経験から得た学びについて明かした。
ドラフト外のテスト生として1984年にスワローズに入団し、「人生初の“挫折”を味わった」と振り返る栗山氏は「(プロの世界は)想像を超えてましたね。キャッチボールからペッパー(トスバッティング)、ノックくらいで全く違うので。『どうなったら自分はこのレベルにいくんだろう』っていうところから、自分に対する疑問とか不安が出てきました。それまで急に一人だけ落ちこぼれるという感覚を経験したことがなかったので、野球やるのが怖かったです」と吐露。
一方で、恩師となる内藤博文2軍監督(2013年に死去)との出会いに言及。「『栗(栗山氏)、他人と比べるな』って。『俺はおまえがほんのちょっとでもうまくなってくれたら満足だ。1回でいいから1軍いってみようや。いいところだぞ』って言ってくれたんです」と回顧し、「(内藤さんの)“他人の心に本当の意味で寄り添う”とか“愛情を注ぐ”ということに触れなければ、1年、2年で終わっていたと思う」と感謝の念を述べる。さらに、監督就任後に実現した内藤さんとの再会を振り返り、「喫茶店で話していたら、急に監督が『栗、バッティングはな…』ってトイレからほうきを持って来て教えだしたんです。涙出てきちゃって…。内藤さんにとって、僕はあのときのまんまなんです。そういう“思い”みたいなものが、僕の指導者としてのベースになっている」と、指導者としての核の部分についても語った。
3年連続Bクラス確定で「血が逆流するっていうか…」
また、自身の監督時代の“挫折”については、監督退任を決めた“ファイターズの3年連続Bクラス(リーグ戦で4位以下)確定”を挙げ、「こういうチーム状況になってしまった責任と申し訳なさ、『もっとできることなかったのかな』『本当すみませんでした』という思いでした」と漏らす。さらに、Bクラスが確定した試合直後の心境について「ものすごく悔しかったです。血が逆流するっていうか…。でも、そういう自分がいたことがうれしかったです。『もっと何かできたんじゃないか』という自分が本当にいたことに、ほっとしました」と打ち明けつつ、「血がたぎるような思いがあったから(日本代表監督のオファーを引き受けた)。(ファイターズの監督業が)終わって何カ月かたっていたら、もしかしたら受けていないかもしれないですね。『今ならこのたぎる感覚は(WBCまでは)続くだろう』というのがあったので」と、侍ジャパンの監督受諾につながる“思い”だったことを明かす。
そんな中、プロ1年目から育てた大谷選手への思いを語る場面も。二刀流にチャレンジさせることに対して寄せられた多くの批判について、「何でみんな駄目だって言っているのか。“その理由を潰せるか潰せないか”というふうに自分は思っていて、『彼の本当のポテンシャルの大きさをみんな分かっているのかな?』とも思っていましたし、『けがする』とか『体力的にもたない』とか、『(そういう声に対して)それをクリアできればいいんですよね?』って。要するに、批判を1つの条件として捉えて考えていた」とコメント。
そして大谷選手が海を渡り、自分の手から離れたときを振り返り、「(ファイターズ時代は)日本の宝を預かって、『絶対に壊してはいけない』と。僕が辞めて責任を取れるようなものではないので。翔平がアメリカに行ったとき、すごくホッとしましたから。今でも(大谷選手を預かるのは)『できれば、僕はいいです』って感じですから」と、ジョーク交じりに告白した。
【制作・編集:ザ・テレビジョン編集部】
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